濱矢文夫の『ニューモデル試乗最前線』 MOTO GUZZI V7Ⅱ Stone/Racer

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モト・グッツィ

「あまり変わっていないじゃないか?」
 
 と思うなかれ。たしかにルックスイメージは継続しているけれど、V7からV7Ⅱへの変更は、乗り味を左右する重要なものが多いと最初に書いておく。
 
 しかし、何度見ても、ルックスの雰囲気作りは素晴らしいと思う。Stoneのシンプルながら他とは似ていない個性。Racerの派手なのに嫌味がない仕上げ。クラシカルなモデルは、日本のメーカーにも存在してきたが、こういうセンスは持ち合わせていない。文化の違いがカタチに出ている。それが高い趣味性を感じさせているのは確かだ。
 
 2台を乗り換えながら走ったのは、群馬県にあるクローズドコース、榛名モータースポーツランドと、榛名湖周辺のワインディング。最初は回りこむようなコーナーが多い小さいクローズドコースで小手試し的な走行からスタートした。セパレートハンドルの前傾姿勢になるカフェレーサースタイルのRacerだって、素の状態でコース走行を想定していないだろうから、この条件だとリーンアングルが足りないのは当たり前。忙しく走っていると、変化だけでなく魅力もピンとこなかった。このオートバイで楽しむ場所として向いていない。V7Ⅱの進化と楽しさを強く感じたのはやっぱりワインディングに乗り出してからだった。
 

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MOTO GUZZI V7Ⅱ Stone。ライダーの身長は170cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます)
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MOTO GUZZI V7Ⅱ Racer。ライダーの身長は170cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます)

 跨ると、Racer、Stone共に、前のV7よりシート高が15mm低くなったことで、良くなった足つき性を実感。これだけにとどまらず、V7Ⅱのキモは、ユーザーフレンドリーさを追求したことだ。MOTO GUZZIのアイデンティティである縦置き空冷Vツインエンジンは、前より4°前傾させて搭載。これによって、ステップ位置の自由度が上がり、25mmダウンさせることで、下半身に余裕をもたせた。長距離、長時間の走行で、同じ姿勢が続く場合に、疲労度が軽減される。これは身長が高く足の長い人だけではなく、小柄な人でも当てはまる。もちろん、余裕がありすぎて届かないとなると問題だけど、流石にそういうことはない。身長背筋が地面に対して垂直に近い姿勢になるアップライトなStoneと、キツすぎない前傾姿勢でStoneよりバックステップのRacerでも、ちゃんとペグを踏み込めるいいあんばいだ。ステップだけでなくシートも下がっていることもあり、実際のところ、増加した余裕は小さいものだけれど、違和感なく、体のどこにも無理がかからないもの(身長170cm)。
 
 エンジンを前傾させ、搭載位置は10mmダウン。シリンダーが車体中心より外に飛び出すように伸びて、どうしても高くなっている重心がより低くなり、低速で乗っていると増した安定感を感じられた。前傾姿勢にならないStoneに乗って、遅めの速度で曲がるときにも適度に前タイヤへ荷重がかかるようになったことで、旋回がより自然になった。ものすごく大きな変化ではないけれど、それは確実。少し前かがみにするというライダーが荷重を考慮した積極的な動きをせず、メリハリなくだら~っと流すようにコーナーへ入っても大丈夫。雨など路面グリップの低い場面でもっとコントロールしやすくなっているだろう。よく効くブレーキとデュアルチャンネルABSも心強い。
 
 まだまだ、改良されたところは終わっていない。シャフトドライブのプロペラシャフト取り付け位置を50mmも下げたことも大きなトピック。Vツインの低回転からしっかりトルクが出るエンジンということもあり、これまでのV7のプロペラシャフト垂れ角だと、スロットル操作に対するトラクション変化が大きく、上り下りで回りこむような低速コーナーなどで、ギクシャクした動きになりやすかった。ある意味、それがMOTO GUZZI V7らしいクセ、走りの個性になっていたけれど、どんな技量のライダーでも気にせず乗れるとは言いがたいものだった。それが大幅に解決されて、いい意味で普通のオートバイとして操れた。変速が5速から6速になってパワーの繋がりが良くなったこともプラスになっている。だから、誰もがすぐに分かるような見た目の変化はないけれど、大幅に変わったのだ。
 
 唯一気になったのは、Stoneのシフトペダルが厚みのある板材で、湾曲しながら前に伸びている形状もありブーツと干渉しやすく、足を動かした拍子に触れてしまい、予期せぬシフトダウンをしてしまいびっくりしたこと。それが分かってからは、ステップに載せた足を無駄に動かさないよう意識して乗って解決したけれど、最初から気にしなくていいものだったらそれにこしたことはないかな。ペダルの位置と形状が違うRacerはその問題はなかった。
 
 クラシカルで存在感のあるスタイルは継承。ニュートラルに入れてスロットルをあおると縦置きエンジン+シャフトドライブのトルクリアクションで車体がやさしく右に傾き、動き出すと、歯切れよく低回転から高回転までフラットにトルクが出る、まるで生き物のようなエンジンは洗練された。誰でも気兼ねなく楽しめる乗り味に。走りも含めて個性的なアクの強いものであったMOTO GUZZI V7が、見た目などポジティブなアクを残しながら、ネガティブなアクを払拭しようと改良した。それが万人に薦められる新しいV7Ⅱシリーズ。マニアックな好き者としての立場だと、分かる人には分かる的なこれまでも好きだけれど、乗り物としてまっとうな前進をしたのだ。こういうレトロなカテゴリーで初めてのトラクションコントロールを装着したという嬉しい目玉新装備もあるけれど、この各部のディメンション変化による素直な走りだけでも扱いやすく、安定感が高まっているので、試乗中に活躍しそうな場面はとんとなかった。
 
 
(試乗:濱矢文夫)
 

MOTO GUZZI V7Ⅱ Stone
 

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V7Ⅱ Stone。足回りには、より安全性を高めたデュアルチャンネルContinental ABSを採用。 V7Ⅱ Stone。V7シリーズは2012年にエンジン周りのモデルチェンジを受け、従来の各シリンダーごとのツインスロットルボディに15RP型ECUの組み合わせだったものから、シングルスロットルボディにECU一体型のMIU G3に変更された。また、2014年には発電システムを空冷から油冷に変更している。 V7Ⅱ Stone。エンジンの搭載位置の変更に合わせて、プロペラシャフトの取付位置も50mm下げられ、アンチスクワット角の改善にもつなげている。
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V7Ⅱ Stone。カラーはマットイエロー、マットレッド、ルビードブラック、マットグレーの4色。 V7Ⅱ Stone。左にスピード(220km/hまで目盛)、右にタコ(10,000rpmまで)をアナログ表示。メーター手前にはABSとトラクションコントロールのインジケーターを設置。 V7Ⅱ Stone。従来のV7シリーズ同様、Dapper、Legend、Dark Rider、Scramblerのカスタムシリーズのアクセサリーが引き続き利用可能だ。アップマフラーのみ仕様変更。
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V7Ⅱ Stone。ミッションの6速化により、1速と高速側2つのギアポジションの減速比を小さくすることができ、結果シフトアップしたときの回転の落ち込み感が少なくなった。 V7Ⅱ Stone。シート高を従来の805mmから790mmへとダウン。ステップ位置も25mmダウンしてより楽なポジション設定に。 V7Ⅱ Stone。ギアボックス側でプロペラシャフトの取付位置を50mm下げることによりスイングアームのピボット位置を下げるのと同様の効果が得られれている(アンチスクワット)。これによりリアサスの動きも改善、加減速時のリアタイヤの接地感が高まっている。

 
MOTO GUZZI V7Ⅱ Racer
 

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V7Ⅱ Racer。マスターシリンダーにABS用専用バルブを採用、リアキャリパーのピストンサイズ変更、そしてシンタード・パッドの採用などによりブレーキ能力を向上させている。 V7Ⅱ Racer。V7からV7Ⅱへのエンジン周りでの変更点は、エンジンを4度前傾させ、全体の搭載位置も10mm下げている。それにより足回りの空間に余裕ができ、ステップ位置も25mmダウンさせている。ミッションも6速化された。 V7Ⅱ Racer。MGCT(Moto Guzzi Controllo di Trazione/トラクションコントロール)を採用。電子進角と燃料噴射制御装置によりリアホイールの加速時のスリップをコントロールしている。
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V7Ⅱ Racer。カラーはクロームの1色。 V7Ⅱ Racer。オプションのMOTO GUZZI Multimedia Platform(MMP:ドライブコンピューター)を装備することで、スマートフォンと連動が可能に。ギアポジションをはじめ各種燃費やバンク角、後輪のスリップ率などの情報を提供。 V7Ⅱ Racer。新形状の黒色塗装ブレーキ、クラッチレバーを採用。
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V7Ⅱ Racer。おなじみ革バンドによりホールディングされるクロームメッキタンクは変わらず。容量22リットル(残り4リッターでリザーブに)。 V7Ⅱ Racer。スエード調シングルシート、ビチューボ製フルアジャスタブル・ショックアブソーバーなどの特長は引き継いでいる。 V7Ⅱ Racer。レッドペイントのフレーム、ホイールハブ、スイングアームとここら辺のデザインも変わらず。
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■MOTO GUZZI V7Ⅱ Stone〈Racer〉 主要諸元

●全長×全幅×全高:2,203×-×1,115mm、ホイールベース:1,449mm、最低地上高:179mm、シート高:790mm、車両重量:189〈190〉kg●エンジン種類:空冷4ストローク90度V型2気筒OHV2バルブ、総排気量:744cm3、ボア×ストローク:80×74mm、最高出力:35kW[48HP]/6,200rpm 、最大トルク:60N・m/2,800rpm、燃料供給:F.I.、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量:22L、変速機形式:常時噛合式6段リターン式●タイヤ(前+後):100/90-18+130/80-17、ブレーキ(前+後):φ320mm油圧式シングルディスク+φ260mm油圧式シングルディスク、懸架方式(前+後):φ40mm油圧式テレスコピック+アルミスイングアーム、フレーム形式:ダブルクレードル
■メーカー希望小売価格:1,098,000円〈1,373,000円〉


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