第77回「温かいお話」

幻立喰・ソ

第77回「温かいお話」


お品書き

 
 今月もお品書きからスタートです。右から順番に見ていきましょう。向かって右からですよ。船で言えば右舷(海上自衛隊では「うげん」ではなく「みぎげん」と言うそうです)、英語ではStarboard(Steering boardが語源)です。ちなみに左舷はport。大昔の船は右舷船尾に舵板(Steering board)があったので、じゃまにならないよう左舷で接舷したのが語源で、ほとんどの飛行機が左側のドアから乗降するのもその名残だそうで。へ〜っ。のっけからタメになるでしょ。飛行機に乗ったら声高らかに披露して、CAさんにウザがられましょう。

 
 さて、トップバッターはかけ。赤手袋柴田を彷彿とさせる不動のトップバッターです。2番は天ぷら。おっと、いきなり信頼の4番打者が2番です。かけと天ぷらしかない立喰・ソならともかく、普通は珍しいです。3番はショート黒江を思わせる名脇役の玉子。月見ではなく玉子表記が嬉しいですね(なにが?)。4番山菜。山国日本ながら都市部では意外とあったり、なかったりの不思議ちゃん。5番天ぷら玉子は組み合わせメニューのホームラン王。6番納豆。納豆自体は珍しくないのですが、立喰・ソではちょっと珍しがられます。7番とり。宗教的戒律(第29回その9を参照)により私には無縁ですが、ひらがなの「とり」表記は珍しい? お次は、か、か、か、かきあげぇ、え! え!! なんと前回苦し紛れで出した天ぷらとかきあげのパラレル(並列)ワールドが出現です。まさに「揚げ揚げ〜っ」という趣(無理ある盛り上げ)。天ぷら320円に対してかきあげ380円。60円もの価格差からも、前回とは異なり両者が別物であることが解ります。同じ物なら揚げ物一揆です(起こりませんけど)。
 その天ぷらの正体とは? 話はすっ飛びますが、某所の焼肉屋に「牛500円、豚350円、鳥300円、肉150円」というお品書きがあるとかないとか……わんわんわんわん、ボコッ、キャンッ!…………これ以上の詮索はやめておきます。

 こちらの立喰・ソでは、おばちゃんの遠謀深慮、あれ? 深慮遠謀だっけ?? どっちかわからなくなりましたが「天ぷらはこちら、かきあげはこちらです」と丁寧に実物を見せて事前にレクチャーをしてくれました。ゆえにドキドキハラハラ揚げ物フェスティバルは杞憂に終わります(先ほどまで杞憂を「ゆうき」だと思っていました。だから「このバカAT○K変換しても出ねえ!」と悪態をついたのですが、バカ丸出しは私。おわびにATOK 2016 for Mac [ベーシック] AAA優待版にバージョンアップしましたから許してください)。



ちくわそば


2014年冬
珍しくないようで珍しい、北海道は大通にあるHのちくわそば。ちくわはちくわでも天ぷらではなく、生の輪切りがばらばらっと。北海道は独得の立喰・ソ文化があります。(2012年5月撮影) 珍しいようでたいして驚かない夏の定番になりつつある豆腐一丁そば。H根そばが元祖のようですが、チェーン店界のあばれはっちゃく? と、かつては呼ばれていた(一人)改装前のEきめんやにもありました。(2011年8月撮影)

 
 この立喰・ソは下北半島です。バリバリ現役店ですから当駄コラムのあってないようなルールに従って実名は伏せます。とはいえ下北半島にある立喰・ソはそれほど多くないはずです(私の知る限りでは2軒)。「下北半島 立ち食いそば」で検索すればすぐ解ります。めんどくさがって「下北 立ち食いそば」で検索するとまったく見当違いの結果になりますからご注意ください。
 バスターミナルの正面にありますが、お昼時でも人通りはまばら。大丈夫かと心配になりますが、あにはからんや。引き戸を開けるとほぼ満席(とはいえ6人ほど)で、想定外の状況におろおろな私にささっと詰めて場所を空けて入れてくれました。東北の方は温かいんです。
 私が食べ終わるまでに3人ほどやって来たのですが、おばちゃんは「いつものでいい?」と間髪入れずの対応。顔見知りの常連さんばかりのようで、天ぷらとかきあげの違いを説明する必要などないのです。なんならお品書きだって不要です。このような一見さんがほとんど来ない場合、排他的アウェイ感が強くなる傾向が高いのですが、そんなこともなくとても親切にしていただき居心地よかったです。
 かんじんの天ぷらの正体ですが、ぜひご自分の目でお確かめください。平日の11〜14時のみ営業とハードルは高いのですが、ハードルの高さと達成感の高さは比例すると申しますし。

 なんでそんないじわるなことを言うのか。すでにみなさんご存じのとおり(知らなかったですか? 憶えといて下さい)いじわるで、さらに度量の狭い人間だからです。三度目の正直でやっと食べられたから、勿体つけているのです。

 
 出会いは偶然でした。2012年の夏、いろいろあって大間からバスで下北駅に向かう途中のことです。2時間ほどバスに揺られ、そろそろ尿意も限界なとき車窓に突然現れた「うどんそば」の看板。いろいろな意味でお小水を漏らしそうになりながらも、走りゆくバスの後部窓から一枚だけ撮れました。いろいろあって2年後の冬に再訪しました。のれんが見えたのでやれうれしやと近づくと、出ているように見えて実は扉の中という、おもわせぶり。営業時間は既に終了状態でした。次のバスまで2時間、呆然と立ちつくしました(ウソです。バスターミナル待合室で座っていました)。三度目の正直が今年(2016年)の秋ということです。
 ここまでさんざんもったいつけた天ぷらの正体ですが、いわゆる、どんべいタイプ、別名北海道標準型のあげだまのかたまりでした。なるほど、たぬきの代用だから2番なんですね。2番じゃダメなんですかじゃなくて、2番には2番の理由があるんです。ちなみにかきあげですが、たまねぎとにんじんの一般的なかきあげでした。



2012年夏


2014年冬
2012年の夏、走り去るバスの窓越しに(左)。その2年後の冬再訪するも営業時間は既に終了(左)。のれんの色が変わっていますね。

 
 お品書きの旅がまだ途中でした。先に進みます。9番山かけ。特に珍しいわけではありませんが、どこにでもあるわけじゃありません。10番わかめは、油&塩分いっぱいの立喰・ソで、これさえ食べれば帳消し的なヘルシー感で人気のレギュラーメンバーです。11番のめかぶも同様ヘルシー系で人気ですが、わかめより少数派です。麺部門のしんがりを努めるのはそうめん。そうめん自体は夏の昼メシの定番で珍しくないのですが、立喰・ソでは珍しい部類です。11番ごはん、12番おにぎりもないところにはないけれどあるところにはあります(当たり前)。いなりはいないようでイナラーとしてはちょっと残念。13番ジュース。どんなジュースか気になりますが、注文することはまずないです。最後は夏期限定メニュー。東北の夏は結構暑いんです。つめたいのが割り増しなのは珍しくないのですが、220円増はかなり高いと思います。ただ冷やすだけではなく、冷やし中華的になんらかの具が積載されるのではないかと推測してみます。

 そしてグランドフィナーレは、つ、つめたいそうめん? そうめんってつめたいのがデフォルトだと思っていましたが、所変われば品変わる。ということは麺部門のトリを努めたそうめんは、あたたかいそうめんということでしょうか? 謎は深まるばかり、夏期に再訪問決定です、か。三度目の正直ならぬ、二度あることは三度どころか四度ある、というハートウォーミングならぬ、そうめんウォーミングというお話で今年は終わり。



天ぷらそば


かきあげ
現役店ではありますが、せっかくここまでがまんしておつきあいくださったみなさまに感謝して天ぷらそばをご紹介(左)。とても優しさを感じる温かいソでありました。右のラップの奥にあるのがかきあげです。(2016年11月撮影)

●立喰・ソNEWS 2016
八戸、まさか!

前回お伝えしたとおり、本八戸のつきだ亭は見事復活を果たしてめでたしめでたしなのですが、八戸の林崎商店はまたまたシャッターが降りたままでした。

よくよく見るまでもなく前回なかった、貼り紙ならぬ貸店舗の看板が……幻立喰・ソになってしまったようです。残念無念、未食のまま二度目の正直ならぬ二度目に引導を渡されてしまいました。つきだ亭のような例もありますから、三度目の正直を願ってまた行ってみますか。行脚は続くよいつまでも、どこまでも。そこに立喰・ソがある限り、足腰が立つ限り、そして大休パスがある限り(おかげさまで西はとんとごぶさた)。みなさま、どうぞよりお年越しソを!



つきだ亭

●立喰・ソNEWS 2016 最終便
2016年のレクイエム(一部)



天王寺駅1番線の天王寺うどん(1月19日)


帯広の小もろ(1月31日)


五稜郭駅のみかど(2月28日)
天王寺駅1番線の天王寺うどん(1月19日閉店・2011年5月撮影) 帯広の小もろ(1月31日閉店・2016年1月撮影) 五稜郭駅のみかど(2月28日閉店・2013年12月撮影)


平和島のあさま(3月25日)


新川のわたなべ(4月15日)


阿佐ヶ谷駅のけやきそば(4月20日)
平和島のあさま(3月25日閉店・2016年3月撮影) 新川のわたなべ(4月15日閉店・2013年11月撮影) 阿佐ヶ谷駅のけやきそば(4月20日閉店・2015年1月撮影)


六花そば東池袋店


あじさい日暮里店


用賀の巨福
六花そば東池袋店(4月28日閉店・2016年4月撮影) 日暮里駅の大江戸そば(4月30日閉店・2016年4月撮影) 用賀の巨福(4月?閉店・2015年12月撮影)


後楽そば


平塚の平塚そば


つるよし
有楽町の後楽そば(5月27日閉店・2013年6月撮影) 平塚のそば新(5月31日閉店・2016年4月撮影) 錦糸町のつるよし(6月30日閉店・2016年6月撮影)


あじわい


つぼみ


新小岩のそば処?
岡山駅7番線のあじわい(6月30日閉店・2008年9月撮影) いわきのつぼみ(6月頃閉店?・2015年3月撮影) 新小岩のそば処?(7月13日閉店・2011年10月撮影)


池袋の六花そば本店


大江戸そば羽田空港国際線ターミナル店


盛岡バスターミナルの南部そば
池袋の六花そば本店(7月29日閉店・2016年5月撮影) 大江戸そば羽田空港国際線ターミナル店(9月30日閉店・2015年4月撮影) 盛岡バスターミナルの南部そば(9月閉店・2014年11月撮影)


池袋の六花そば本店


大江戸そば羽田空港国際線ターミナル店


盛岡バスターミナルの南部そば
新宿のつのばず深大寺そば(11月18日閉店・2014年4月撮影) 表参道の玉川屋(初春?閉店・2014年11月撮影) 勝浦駅前立ち食いそば(閉店?・2013年8月撮影)

お疲れ様でした。どうもありがとうございました。また会えますように!


バソ
バ☆ソ
日本全国立ち喰いそば全店制覇を目論む立ち喰いそば人。やっと1000店以上のデータを収集したものの、ただ行って食べるだけで、たいして役に立たない。立ち喰いそば屋経営を目論むも、先立つものも腕も知識も人望もなく断念。で、立ち喰いそば屋を経営ではなく、立ち喰いそば屋そのものになろうとしたが「妖怪・立ち喰いそば屋人間」になってしまうので泣く泣く断念。世間的には3本くらいネジがたりない人と評価されている。一番の心配事はそばアレルギーになったらどうしよう……。


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