第54回 国道307号と兵庫県道16号

おやびん道

それぞれの道には、それぞれの風土、気候、環境などを積み重ねた表情がある。それはまた人生にも似ている。道は人生、道の数だけ物語がある。野口おやびんが走って来た幾多の道を、想い出話と共に語ろうか。

第54回 国道307号と兵庫県道16号



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今年の春、女房とふたりで神戸にいる孫の顔を見に行った。ソロならバイクだが、タンデムだと何かと大変だし、昔と違って女房はバイクの後ろに乗りたがらないので車で出かけた。その往路で走った彦根市~枚方市を結ぶ国道307号が結構楽しい道だった。そして帰路、以前から走りたいと思っていて、去年の夏、近くまで行ったものの、台風による土砂崩れだかで通行できなかった、低中速コーナーが続く六甲山のワインディング・県道16号=西六甲ドライブウエイを走った。さすが、と思えるルートで、バイクならさぞ楽しかっただろう。

 ここ数年、日頃の労をねぎらうつもりで、3月、女房の誕生日祝いに海辺や山間の温泉など、車で1泊旅行をしている。今年も、もう4か月前のことになるが、3月、出かけることにした。どこに行きたいか聞きつつ、神戸にいる孫に会いに行って数泊し、帰路、どこかに寄って泊まり、帰宅する、というのはどうか? と提案。「それいいわね、そうしましょう」。で、決定。初日、8時頃出発。東名高速~新東名~伊勢湾岸道~東名阪とつないで、亀山JCTから新名神へ。去年、サンダーバードで神戸~尾道ツーリングしたときと同じコースだ。

 12時頃、土山SAに入り、昼食を摂りながら「このまま高速で神戸まで行くと早く着きすぎるから、ちょっと観光していこうか」。忍者の里として知られる甲賀はすぐそこだ。甲賀市の観光ガイドパンフレットを見ると「甲賀流忍者屋敷」。行ってみよう。甲南ICで降り、郊外の田舎道をしばらく走る。駐車場に車を止めて少し歩いて現地へ。なるほど、雰囲気はある。ただ、入館料を払ってまで内部を見たいとは思わず、写真だけ撮った。平日だったが、若い学生などいくつかのグループが前後して訪れ、写真を撮ってから、入館していった。

 さて、この先、どうするか。まだ時間に余裕がある。神戸の三ノ宮駅近くで5時半に娘と待ち合わせしていた。退社して保育園から孫を連れてくるとそのくらいになるからだ。地図を見ると、甲賀から国道307号を西に走れば大阪に行ける。途中、信楽の里もある。時間が押して来たらその時点で高速にまた乗ればいい。国道をしばらく行くと、名物の狸の焼き物などを軒先に並べた窯元の店がとぎれとぎれに立ち並ぶ。それを見て思い出した。もう15年くらい前だろうか。ハーレー5、6台のツーリング比較試乗で通った。雨だったっけ…。

 狸と並んで写真を撮り、先へ進む。山間のワインディングと小さな集落などが交互に現れる。いい雰囲気の区間もあって、結構なツーリングルートだな。そう思っていると、すれ違うツーリングバイクが何台も。ソロが多く、荷物は小さい。比較的近場のライダーが日帰りや半日でツーリングするのに適している人気の道のようだ。交通量は少なく、路面状況も悪くない。宇治田原に近づくと茶畑も目に付くようになった。宇治茶の産地なのだろう。宇治田原の市街地で給油したが、レギュラーがなんと100円を切っていてびっくり。

 枚方に入ったあとは標識を頼りに大阪の中心地へ。国道2号に入ってしまえば神戸は近い。大阪の市街地を走るのは車では初で、バイクでも久しぶりだった。でも予想外に走りやすく、距離も短く感じた。迷うことなくR2号に入れ、西走して三ノ宮駅近くに着いたのは5時半前だった。40分頃、娘が来て、女房とふたりで保育園に孫を引き取りに行き、車に戻ってきた。久しぶりに孫に会えた嬉しさ。ジジイはもうメロメロ。その木曜の夜から日曜の朝、別れるまで、俺も女房も孫と至福の時間を過ごしたのだった(孫ってホントに可愛いねえ)。



信楽焼きの狸
有名な信楽焼きの狸。とぼけたような表情が何とも言えない。サイズもいろいろあって楽しい。


国道307号線
国道307号線の甲賀~宇治田原区間にある小さな峠道。一方、田園風景のなかを走るのんびりした道筋もある。


国道307号線

 帰路は琵琶湖畔を走って近江八幡を観光し、彦根に泊まって月曜の午前中に彦根城を観ることにしていた。日曜もお天気はよく、9時頃、後ろ髪を引かれつつ孫と娘夫婦にさよならを言い、出発。通行止めが解除されているのかどうか不明だったが、国道428号線経由で県道16号線に入る。すぐに低中速コーナーが続くワインディングで、西六甲ドライブウエイと呼ばれている。時折、ライダーとすれ違う。ハードなコーナリングをするライダーばかりじゃなかったけれど、みんな走りを楽しみにきているのだろう。俺もバイクで走りたかった。

 途中、ちょっとしたスペースに車を止めて小休止。神戸の街並みや港を見下ろす。やや霞がかかっていたが、見晴らしがいい。夜景はさぞかし美しいんだろうな。六甲山には、西六甲ドライブウエイのほか、表六甲、裏六甲などいくつものワインディングがあるが、いまだ二輪通行が禁止されているところもある。かつて、東の箱根に対して西の六甲と呼ばれ、関西の走り屋、ローリング族で賑わった。かつてホンダのワークスGPレーサーだったある有名ライダーも六甲山中のワインディングに通い詰め、腕を磨いた、と聞いている。

 道路わきでひと休みしている数人のライダーも何組か目に入った。県道16号線を東に進んで県道82号線を左折。しばらく走って県道51号線を右折し、国道176号線に出て東へ。歌劇団で有名な宝塚に入り、宝塚ICから中国自動車道に乗る。その後は予定通りのコースで近江八幡に行き、彦根のホテルに投宿。翌日も予定通りにお城を見て回り、一作年の夏に入ったお濠近くの蕎麦屋さんで昼食後、高速に乗って家路に着いた。なんといっても孫に会えたことが一番だが、お天気にも恵まれ、予想以上に楽しい旅であった。



国道307号線


国道307号線
西六甲ドライブウエイは低中速のブラインドコーナーが多く、走り応えがある。対向バイクはいいペースで走っていた。 西六甲ドライブウエイの道路わきから見える神戸の街や神戸港。雲が多く、薄く靄がかかっていたが眺望に優れる。 


野口眞一

野口眞一
1956年、7月生まれ。バイクに乗って40数年、バイク雑誌関係の仕事に就いて30数年。若い頃からバイクの旅が好きで、日本各地を走り回ってきた。所有するバイクは今となっては滅多に見ないトライアンフのサンダーバード(1996年型の水冷並列3気筒)で、丸19年乗り続けている。長く乗っている割には走行距離は少なめで8万km。

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